2013年08月17日

歌舞伎鑑賞教室の「葛の葉」

 そもそも歌舞伎を観る機会が減っていて、1年ぶりの観劇だっただけでなく、『芦屋道満大内鑑』「葛の葉子別れ」を観たのはかなり久しぶりのような気がする。都心からかなり離れた勤務先に勤める身として、「社会人のための歌舞伎鑑賞教室」の19時開演(芝居だけ見ようと思えば19時45分から)は貴重な機会である。
 眼目の中村時蔵の葛の葉は、赤姫の葛の葉姫と女房葛の葉との演じ分けがよく出来ていると感じる。特に女房葛の葉を世話で演じる際に、生世話ではなく、丸本物ならではの世話の演じ方がしっかりと出来ていると感じた。機屋で早替わりを見せた後、舞台が回って奥座敷になると、子役はいるけれど、ほぼ一人芝居になる。最近、小劇場で歌舞伎ではない演劇を観ることが少なくないので、改めて歌舞伎座や国立劇場など大歌舞伎の舞台で客席の隅々まで届く演技をするには、役者に要求されるものが大きいことを感じる。
 ところで、私の場合、3階席や幕見席から歌舞伎を観ることがほとんどなので、国立劇場で観劇する場合の収穫は花道が見えること。鑑賞教室は3階以外は均一料金なので、いつも1階で観ることにしている。葛の葉の場合、性根が狐だから、引っ込みは六方を踏む。女形の演じる役としては珍しい引っ込み方だ。これは、原作の人形浄瑠璃にはない歌舞伎ならではの楽しみだった。
 安倍保名は坂東秀調。歌舞伎座ではまず回って来ない2枚目役を手堅く演じている。あるいは「花がない」などと評する向きもあろうが、こうした普段は回って来ない役を客席に違和感をあまり与えずに演じている点で、秀調の実力を評価すべきだろう。層が厚い座組の時もあればそうでない時もある。芝居はこうした器用な役者に支えられて成り立っているということを痛感。他に市村家橘の信田昭二、市川右之助の庄司妻柵。
 もう一つ、この日収穫だと感じたのは、竹本幹太夫の進境。御簾内で「機屋」を、出語りで道行を語ったが、特に道行が充実。もともと美声の太夫だが、それがどこか鼻につくところがあった。それが、いつの間にか発声に違和感がなくなり、本格の義太夫節の声になって来た。先日は竹本喜太夫が亡くなるなど、世代交代の進む竹本連中の中で貴重な存在になって行くに違いない。三味線は鶴澤寿治郎ほか。
 幕開きの解説は時蔵の次男の中村萬太郎。昨年7月の澤村宗之助と比べても、まだまだ硬い感じで、解説とは言え、言葉が一本調子になりがち。早くたくさんの舞台経験を積んで伸びてほしいと願う。
(7月12日所見、7月16日記)
posted by 英楽館主 at 06:55| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌舞伎〜幕見席からのつぶやき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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