2013年12月31日

追悼 2013年 今年お別れした舞台人

今年も残るところあと2時間を切ったが、1年を振り返って、今年世を去った舞台人への愛惜の年を表しておきたい。

茂山千作(4世、狂言・大蔵流)
市川團十郎(12世、歌舞伎役者)
竹本喜太夫(歌舞伎、竹本連中)
坂東三津之助(歌舞伎俳優)

 茂山千作は、私が能楽に親しみ始めた頃、太郎冠者を演じさせたら一番の味を醸していた狂言役者。弟の千之丞さんに先立たれてからはさぞ気を落とされていたことと思う。多くの後進を育ててくれたが、やっぱり記憶に残るのは「木六駄」のシテ太郎冠者だ。この人の舞台を観たからこそ、私は老ノ坂峠にも足を運んでみたいと思ったのだった。
 私は、歌舞伎を見始めたころは市川團十郎が好きではなかった。上手いとも思えなかった。その私が生の舞台で1度だけ「成田屋!」と褒めたことがある。国立劇場の歌舞伎鑑賞教室で「俊寛」を初役で演じた時のことだ。私は1階後ろの補助席で観ていたのだが、大向うが誰も来ていなくて、見栄が決まらず、舞台が締まらないので褒めたのだった。私の目の前で寝ていた引率教師や高校生が将棋倒しの逆で次々と起きて行く光景は奇妙で、おそらくは滅多に見られないものだった。閑話休題、團十郎はニンの合う役を演じさせたら本当に味のある得難い役者で、その味は、私自身が年を重ねて初めてしみじみと感じられるようになったものだった。つくづく長生きして大成してもらいたかった。あえて私の思い出の舞台を一つだけ挙げるならば、「和尚吉三」(2008年3月だっただろうか?)である。
 竹本喜太夫は、この4半世紀の歌舞伎の丸本物の舞台をずっと支え続けて来てくれた歌舞伎の陰の立役者。見始めの頃に若干の舞台に接した竹本文春太夫を例外として、この人ほど音遣いの正確な竹本の太夫はいなかった。
 坂東三津之助は歌舞伎の脇役の役者さん。みの虫時代の見事なトンボ、特に現三津五郎(当時:八十助)初役の「蘭平物狂」の舞台が忘れ難い。まだ51歳、これから本格的な活躍が期待されるさ中での早世だった。

 心より御冥福をお祈り申し上げます。
posted by 英楽館主 at 23:02| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013 私の音楽ベスト10

2013年 私の音楽ベスト10
@ エサ・ペッカ・サロネン指揮フィルハーモニア管、レイフ・オヴェ・アンスネス(ピアノ)(2月7日)
A びわ湖ホール ヴェルディ『椿姫』(3月9日)
B ユリアンナ・アヴデーエワ(ピアノ)、ブリュッヘン指揮18世紀オーケストラ、ショパン:ピアノ協奏曲第1番、第2番(4月5日)
C 東京二期会 ヴェルディ『マクベス』(5月)
D ユベール・スダーン指揮東京交響楽団、東響コーラス他、モーツァルト:『戴冠ミサ』&『レクイエム』(バイヤー版)(4月)
E アンドレア・バッティストーニ指揮東京フィル レスピーギ三部作(5月31日)
F 日生劇場 ライマン『リア』(11月10日)
G ヤクブ・フルシャ指揮都響 スーク:交響曲第二番「アスラエル」(11月19日)
H チョン・ミョンフン指揮東京フィル『トリスタンとイゾルデ』(11月23日)
I ポール・メイエ(クラリネット)、アルティ弦楽四重奏団(豊島泰嗣・矢部達哉・川本嘉子・上村昇)(12月11日)
※ 複数回聴いたもの、観たものは月のみの表示。
[短評]
@とDは、現代楽器のオケにピリオド奏法を採り入れた演奏として秀逸だった。またDはアマチュアの合唱団がモーツァルト2曲を1ステージで歌い、かつ高水準の歌唱を聴かせた点でも出色だった。
Aは安藤赴美子のヴィオレッタと歌手としての経験を活かしたアルフォンソ・アントニオッツィの演出を楽しんだ。沼尻竜典のオペラ歌手としての進境も実感。
Bは、ピアノをろくに弾けない筆者にとって、ショパンの協奏曲の評価を根底から覆してくれる素晴らしい演奏だった。アヴデーエワはショパン・コンクール優勝直後に来日してN響に登場した時とは全く別人の印象。
Cは、人間とはいかに量り難い存在かを思索したコンヴィチュニー演出が今回も鮮烈。特に、魔女の釜に放射性廃棄物のドラム缶を放り込む場面が印象に残った。コンヴィチュニーの演出の根源にはソフォクレス『アンティゴネー』の「人間とは不思議な存在だ」(別訳「人間とは不気味な存在だ」)という言葉があるように感じられた。
Eは、バッティストーニの今後の可能性に瞠目。東京フィルとの今後の共演に期待したい。
Fは、下野竜也指揮読売日響の好演と二期会の歌手陣の総力を挙げた力演でこれからも記憶に残って語り継がれるであろう貴重な舞台となった。
Gは、筆者にとって生では未知だった曲との出会いを楽しむと同時に、フルシャと都響の演奏の一体感が見事だった。
Hは、歌手はまずまずだったが、それ以上にチョン・ミョンフンと東京フィルが醸し出した深い音色が忘れ難い。かつて定期的に東京フィルを指揮していた時代には得られなかった音楽的な成果が10年余りの歳月を経て熟成されて来た。
Iは、メイエとアルティ弦楽四重奏団、双方の柔らかな音色が響き合って、稀有の水準の演奏(特に矢部達哉が第1ヴァイオリンを担当したブラームスの5重奏曲)。
[音楽時評]
 本業の都合で、筆者が「評論家」として執筆をするようになった1998年以来、最も実演に接する機会の取れなかった1年だった。特に、行けなくなる危険性の高い外来のアーティストの公演チケットを買うことを避けたため、国内の演奏家に偏った嫌いはあるが、批評家で国内のオーケストラを丁寧に聴いている人が少ない現状を考慮すれば、私の「ベスト10」を公表することにも意味があるだろう。
 ところで、中学生時代から日本(主として在京)のオーケストラを聴いて育って来た筆者にとって気になったのは、オーケストラの定期会員券の販売や継続がネットで行われる動きが出て来たことである。時代の趨勢として当然のこととは思うが、楽団員の音楽的な精進とは別次元で、事務局の努力の差が、チケット販売力の差につながってしまうのではないかという危惧を抱いている。在京オケでこの秋の、新年度に向けての継続にネットでの席替えを実施したのは、都響と読響。(東響、東フィル、シティ・フィルはまだネットでの継続は実施していない。)両者を比べると、少なくとも定期会員への配慮という点ではほぼ全ての面において読響が劣る。その原因は、
@ 読響事務局がチケット販売部門をチケットぴあに丸投げしていること
A 読響事務局側が、チケットぴあのシステムへの検証を怠っていること
に主たる原因があるようだ。この件については、継続の手続きが完全に終わってから論評をする予定である。
posted by 英楽館主 at 22:13| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | コンサートつれづれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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