2016年03月28日

2016年春 ドイツの旅(6)

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エッセン市立アールト劇場

〈写真解説〉
左上:外景。無駄のない設計だが曲線的なのが面白い。
中央上:ロビー。白を基調とした設計は外景と共通。階段なども広くゆったりと取られている。2階、3階客席の通路の曲線がアクセントになっている。
右上:設計者アールト(1898〜1976)の銅像。フィンランド出身の建築家。エッセンのアールト劇場の完成は1988年で没後の仕事は妻のエリッサに引き継がれましたが、この劇場に来る度にアールトの才能を感じます。
左下:場内の風景。下手側から撮影。左が舞台。右が2階、3階客席。4階は設備だけで客席はありません。シートは青でいかにもドイツらしい無機的な色合いですが、落ち着く空間に仕上がっています。
中央下:地上階のカフェの風景。ドイツの劇場は、エッセンに限らずカフェが広いのは素晴らしいことです。特に終演後にはメロディーを口ずさみにくいような現代作品の場合、幕間にカフェで仲間と語り合う時間は貴重です。2階にメインのカフェがありますが、立ち席が主になっています。
右下:2階カフェの脇から撮影した風景。芝生の向こうに見えるのがエッセンのフィルハーモニー。シューボックス型のコンサートホールです。残念ながら、私はオペラばかり観ていて、フィルハーモニーには足を踏み入れていません。写真中央に縦長の模様が入っているのは、自然採光の窓からの光が反射したものです。

〈本文〉
 今日はエッセンのアールト劇場でマルティヌーの『ギリシャ受難劇』を観ます。このエッセンのアールト劇場は、ドイツに数あるオペラハウスの中でも特に皆さんに御紹介したい劇場の1つです。日本にもこんな劇場があったらと、訪れる度に思います。建築の素晴らしさはもとより、客席数1300という歌手に負担のかかり過ぎない設定が良いのです。日本は最初に採算ありきですから、この座席数の劇場は日生劇場くらいです。日本の歌手が育ちにくい原因の一つはこの座席数にもあると考えています。一方で、新しい劇場ですので、ピットは広く、深さも自在に設定できるようになっています。この劇場、本当にお勧めですよ!
 エッセンはケルンからICやICEで1時間弱、かつては鉄鋼業で栄えた街だと聞きます。新しい劇場であるアールト劇場も既に築25年ですが、ドイツらしい装飾過多ではない設計の中で曲面を多用している点、自然の採光によってロビー空間の居心地が良い点などが特色です。オペラの上演水準も高いことで知られています。かつてはN響によく来演したハインツ・ワルベルク(ヴァルベルク)がGMDを長年務めました。その後、近年では新日本フィルに客演しているヴォルフ・ディーター=ハウシルトがGMDを務めた時に第1カペルマイスターだったのが上岡敏之です。20世紀末から21世紀初頭にかけては長らくシュテファン・ショルテスがGMDを務め、特に後半はインテンダントも兼任していました。私は、ショルテス時代に『ルイーザ・ミラー』『ナクソス島のアリアドネ』『イェヌーファ』『タンホイザー』『薔薇の騎士』を観ており、今回が6回目、久しぶりの来訪です。現在はチェコの俊英トーマス・ネトピルがGMDを務めて新時代を築いています。
 なお、オーケストラ(エッセン・フィルハーモニー)はマーラーの交響曲第6番「悲劇的」を初演した楽団としても知られています。
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2016年春 ドイツの旅 (5)

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エッセンへ

〈写真解説〉
左:ドイツの新幹線ICEの運転席。旧型のICEは先頭車両と最後尾車両が機関車でしたので、こういう風景はあり得ませんでした。今日の運転士さんは女性のようです。ドイツでは運転士だけでなく女性のパイロットも日本よりもたくさんいて、男女差が少ないと感じます。
中:エッセン中央駅の風景。いかにも西。旧西ドイツの中でも最も豊かな地域です。
右:駅前のOstermarkt(復活祭市場)の風景。ちょうど雨が降り出して人が少なくなってしまって賑わいの感じられない写真になってしまったのが残念です。買い物については後ほど紹介しましょう。

 ヨーロッパは今日から夏時間。時間の勘違いに要注意の1日です。8時58分ヴァイマール発の列車でエッセンへ移動。今日はエッセンでマルティヌーの『ギリシャ受難劇』の上演があるので、どうしても観たいのです。この作品、後ほど詳しく書きますが、まだ日本では一度も上演されていませんけれど、オペラ、あるいはミュージカル等の他のジャンルも含めて音楽劇の持つ可能性を追求した素晴らしい作品であり、また、今の時代に欧州の人にとっても、日本国憲法が危機にさらされている日本人にとっても大きなメッセージ性を持ち得る作品です。
 それはともかく、途中、エアフルト、フランクフルト空港、ケルンで3回乗り換え。ドイツの鉄道の正確さを考えるとどこかで乗り継ぎに失敗する覚悟は出来ていましたが、幸いに今日はケルンの5分乗り継ぎも含めて全て時間通りに列車が動いてくれて幸運でした。
 フランクフルト空港からケルンへのICEはホームの端まで歩かされて先頭車でしたが、運転席の写真が撮れたので良しとしましょう(降りる直前にもう一度、運転席の車窓からケルン大聖堂が見える写真を撮ることが出来ましたが、携帯で撮ったので、帰国後に追加でアップします)。
 エッセンの駅前ではOstermarkt(復活祭市場)が開催されていました。
posted by 英楽館主 at 13:50| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年春 ドイツの旅 (4)

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大収穫だったドイツ国民劇場の『薔薇の騎士』再見

〈写真解説〉
上:チケット。一番下に「時間、それは奇妙なもの」という第1幕後半の元帥夫人の歌詞が印字されているのがさりげなくお洒落。下:配役表。Sayaka Shigeshimaが読み取れるようにトリミングしました。

 17時45分頃にドイツ国民劇場に到着。『薔薇の騎士』を当日券で観る。去年はもっとギリギリに到着したけれど、奥さんが来られなくなってチケットを持てあましているという人が前から3列目(1回券の定価は65ユーロ)を30ユーロで買ってほしいというのに乗って、すごく良い席で観ましたが、今年は売りに来ている人は見当たらなかったので、普通にチケットを購入。手頃な価格の3階席へ。下から2番目のランクの28.7ユーロの席、3階5列目のほぼ真ん中にしました。新国立劇場の4階席と違って、ちゃんと舞台は隅々まで見えます。
 去年も買ったけれど今年もプログラム(2ユーロ)を買い、席に着いて去年と同じ演出だし、指揮者も配役も大差ないだろうと思いながら配役表を見てびっくり。なんとオクタヴィアンを歌っているのがSayaka Shigeshimaさんという日本人ではありませんか!『薔薇の騎士』という作品を御存知の方には釈迦に説法ですが、オクタヴィアンはこの作品の主役で婚約の印の「銀の薔薇」をファーニナル家に届けて、結局はファーニナル家の令嬢ゾフィーと結ばれることになる主役です。元帥夫人は第1幕と第3幕だけ、ゾフィーは第2幕から登場しますが、オクタヴィアンは最初から最後まで出ずっぱりの大役です。もう1つ言えば、メゾ・ソプラノというのは、日本人で世界的に通用する人があまり出て来ていない、ドイツと日本でオペラを観ていると落差を感じる声域なので、それを日本人が歌っているなんてすごい!いったいどんな人なのだろうと思いました。時差と闘うヨーロッパ初日の夜ですが、これだけで眠気が吹き飛びました。
 ヴァイマールの『薔薇の騎士』の舞台は、ヴェラ・ミネロヴァという女性の演出家によるもので、第1幕の幕開きが元帥夫人とオクタヴィアンの情事を覗き見する執事の姿から始まる等「覗き」の場面を多用して、この作品のコミカルな側面を強調した演出です。もともと貴族の世界に「覗き見」は付き物です。主人の情事を知っていても口外しないのが家来の役どころ。これはオペラでも日本の古典の『源氏物語』でも変わりません。『薔薇の騎士』の場合、脇役のヴァルザッキやアンニーナも覗き見をして事情通だからこそ暗躍するわけですよね。
 元帥夫人のラリッサ・クロキーナは、この日は第1幕後半の独白の部分で声がしっかりと身体に響いていない感じが今一つでしたが、第3幕はなかなか良い声でした。ゾフィー役のエリザベート・ヴィンマーは第2幕の登場直後が少し不安定でしたが、尻上がりに調子が上がって行きました。対するオクタヴィアンの重島清香さんは、日本人らしい生真面目さで第1幕から第3幕までしっかりと歌っていて安定していました。ズボン役の男の演技や歌い回しの味というのはまだまだこれからだと思いますが、アンサンブルの足を引っ張る瞬間が皆無なのは素晴らしいと思いました。
 稿を改めて書きますが、日本人の音楽家の方の活躍を知って書こうとすると困るのが、お名前の表記です。現地のプログラムにはローマ字表記しかありませんから「しげしま」さんも「さやか」さんもどんな字なのかわかりません。重島さん、ローマ字表記でも同姓の方は少ないと思いますが、「清香」の字でさやかさんは珍しいですよね。終演後に御本人にお会いして確認しないと書けません。最初は終演後に楽屋口でお待ちしようかと思ったのですが、ふと思いついて、3幕の開幕前にピットの上から日本人のオーケストラ団員の方にお声をかけて、終演後にコンタクトをお願いしました。そんなこともあり、第3幕だけは空席の目立っていた1階2列目で図々しく聴かせてもらいました。
 この日の第3幕最後の3重唱は実に心地よい出来栄えで素晴らしい時間でした。オクタヴィアンが「Marie Therese」と歌い始める直前の休符がこの日は特別に長く、その瞬間に歌手もオーケストラも気持ちが1つになったように思います。GMD(音楽総監督)のシュテファン・ゾリョン(Stefan Solyom)、劇場の指揮者として良い仕事をしたと思います。こういう雰囲気で歌手の調子が良いと、ドイツの劇場のオーケストラっていうのは上手いんです。オケのメンバーも全員自分の持っている一番良い音が自然と出て来て、瞬間的にはベルリン・フィルにも負けないくらい上手い。私は、重島さんへの感情移入もあって、元帥夫人が「In Gottes Namen !」と三重唱を歌いきってティンパニーのロールが入る瞬間に思わず落涙してしまいました。後で聞けば、今日はこのプロダクションの最終日(今のところ来シーズン以降の再演の予定はない)だったのだそうで、舞台に上がっていた人たちの特別な思いが結集した瞬間に立ち会えたのは本当に幸せでした。
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2016年春 ドイツの旅 (3)

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時差は大の苦手!

 ホテルの部屋は15時からチェックインできるので、水やパンを買いながら駅前のホテルに戻り、部屋で少し昼寝。何しろ時差の関係で今日は1日が32時間もあるのだ。時差が苦手な上に、今日のオペラは18時開演の22時15分終演予定。日本時間だと27日(日)午前2時開演の午前6時15分終演で真夜中にオペラですから、寝ないようにすることが最大の課題で、市内観光は制約を受けることになるわけです。
特に今回は、昨年夏のイタリア旅行の後に2回目の左足大腿部の深部静脈血栓症をやった後なので、今は抗血栓薬を飲んでいるから大丈夫とは思っても、飛行機の中ではいくら飲んでもほとんど眠れずに苦しんだので、どうしてもここで睡眠をとっておく必要がありました。午前1時発の深夜便で周囲はほとんどがぐっすり眠っている中で1人で悶々と飲み続けるのも苦しいものですよ。
ちなみに眠気対策に、今回はタリーズブラックを10本以上持って来ました。ヴァイマールの劇場で昨年『ばらの騎士』を観た時は2度の幕間にコーヒーを飲みましたが、他のお客さん達はほとんどコーヒーを飲む人がいなくて、2幕の後のコーヒーなんか、たぶん開演前からずっとポットの中に残っていてぬるくなっていましたので、あんな物にお金を払うくらいなら日本の缶コーヒーの方が安上がりだし、キャップがしっかりしていて飲み残しも可能っていうわけで、多少行儀が悪いかもしれませんが、手提げかばんに缶コーヒーとドイツ語の辞書を入れての劇場通いです。昨年夏にヨーロッパをドライブ旅行した時に日本から持参した缶コーヒーが重宝したというのもあるんですけどね。
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2016年春 ドイツの旅 (2)

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〈写真解説〉
上2枚は市立博物館前の看板。縦長なので2枚に分けました。下の写真はエーベルトの肖像画ですが、その右奥にドイツ国民劇場が描かれています。小さいけれど、ゲーテ&シラー像が小さく描かれているので解ると思います。3枚目が図録の写真。ホテルの部屋でストロボを発光させたので見づらいかもしれませんが御容赦ください。

 昨年訪れた時にも、旧市街にヴァイマール憲法に関する記念碑などを見かけなかったので、今回はどこかにないか探してみたいと思っていた。市立博物館の展示で、ヴァイマール憲法制定のための話し合いは、国民劇場で行われていたことを知った。ゲーテとシラーの銅像だけでなく、やっぱりヴァイマールの国民劇場は、本当に訪ねる価値のある劇場だと実感する。実は、今晩はヴァイマールに来ようか、それともメンヒェングラッドバッハというデュッセルドルフ郊外の街の劇場で『ばらの騎士』を見ようか、はたまたエッセンに連泊して『エレクトラ』を見ようかで迷ったのだけれど、ヴァイマールで国民劇場を訪ねる計画を立てて本当に良かったと思った。
 展示では、国民劇場に入るエーベルトの写真もあったが、鉤十字の旗で覆われた国民劇場でナチスの大会が行われてヒトラーが右手を掲げているおぞましい写真もあった。第一次大戦後の民主主義の出発点となったこの街もまた、その数年後にはナチスが大きな勢力を持つに至ったのである。
 市立博物館は、ゲーテ博物館と違って見学者は少なかったので、じっくりと見ることが出来た。展示の図録9.8ユーロを買い、ドイツのパブリックな場所では比較的珍しい自動販売機のコーヒー(50セントだったけれど味はまあまあ。ちゃんと挽きたてをドリップしてくれるもの)を飲みながら図録を眺めて休憩。とても貴い時間を過ごしたと感じた。
posted by 英楽館主 at 03:33| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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