長谷寺の観音は、平安時代の女流仮名文学や鎌倉時代の説話集ではお馴染み。観世音菩薩は現世利益の仏として知られる。だから、古くは『蜻蛉日記』や『枕草子』、『更級日記』にも初瀬参詣の様子が紹介されている。『宇治拾遺物語』や『古本説話集』などの説話で名高い「藁しべ長者」の話も、御利益の最初は長谷寺での霊夢と、その門前で手にした1本の藁しべだった。
その長谷寺が、この秋から再来年にかけて特別拝観で本尊の十一面観音を公開している。¥1,000の特別拝観料は安くはないが、寺僧の対応はしっかりしていて、観音像を、足を撫でながら参拝できるし、いろいろな質問にも答えてもらえる。
幾度か火災に遭った長谷寺の現在の本堂や本尊は室町時代のものだそうだが、その本道と通路1本隔てて建っているのが写真の「大悲閣」だ。かつてこの長谷寺に参籠(泊りがけでお参り)した人々も、こうした建物の板敷の上で心を籠めて祈ったに違いない。

