[概観]
問題文は長くなったが、場面は把握しやすく、選択肢も紛らわしいものが少ないので、古文問題全体の難易度はそれほど上がっていないと思います。設問は、内容一致が2題出題された点が今年の特色の1つ。傍線部の前後だけでなく、問題文全体を読ませたいという出題意図が感じられます。
センター試験の古文は、問題文を「どう分節化して読むか」が一番の課題。それに留意しながら学習を進めることがコツです。過去問に取り組む場合は、年度順でも構いませんが、「段落数の多い問題」を先に勉強して、だんだんと「段落数の少ない問題」(=場面の切り方が上手な人とそうでない人で時間や正答率に差が出やすい)へと進めて行くと、より効果的です。
ちょっと気になるのは、今回の問題文『一本菊』の主人公兵部卿宮の行動パターンが、現代の視点で言えばストーカー的だということです。出題担当者は問題文探しに四苦八苦していると思いますが、男女関係の扱われ方には、もう少し神経を遣うことが望まれると、私は感じます。
[設問毎の解法]
問1(ア) 希望の終助詞「ばや」が「〜たい」の意味だと理解していればBが選べる。
(イ) 「なべてならず」は「並大抵ではな(くすばらし)い」の意。
「匂ひ」は嗅覚よりも視覚的な意味で用いられることが多い。従って答えは@。
(ウ) 「思し召し寄る」は「思ひ寄る」の尊敬語。ここでは「思い付く」の意ではない。
文脈から「好意を抱き始める」の意味だと判断する。正解はC。
問2 基本的な問題。傍線部はいずれも紛らわしい語ではない。正解はC。
敬語の学習は、敬意の方向を確かめるだけでなく、主な敬語の語義の学習とバランス良く進めることが大切です。
問3 まず、「適当でない」ものを選ぶ設問だという点に注意!基本的には「内容一致問題」のヴァリエーションなので、消去法で解く。
@は適当。男女間の贈答歌の中で、相手を季節の景物になぞらえるのは常套手段。人物を中心にストーリー展開を考えると「君」を「白菊の花」になぞらえていると考えられるが、Aの和歌が詠まれる場面では、兵部卿宮の目の前にあるのは歌に添えて贈る「白菊の花」であって、兵衛佐の娘ではないので、「白菊の花を『君』になぞらえる」という説明は正しい。率直に書けば、私は最初に解いた時に、@の説明が逆転していると思い込み、この選択肢を選んでしまった。それは、「兵部卿宮が歌を詠む場面」に対する想像力が不足していたからである。
Aの「うつろふ」の語義に関する説明、Cの掛詞の説明、Dの「こそ〜已然形」の係り結びの説明が適切なものであることは、比較的見抜きやすい。
正解はB。後半に誤りがある。「行き通ふ跡は知らねど」は、「あなたに逢う手立てはわからないけれど」の意で、Bの歌の三句目以降「逢坂の関を越えたい=あなたと結ばれたい」と同等に重要な詠み手の状況説明であり、「序詞」ではない。「序詞」は、「枕詞」とは違って訳すことが出来るが、和歌の意味の中核にはならない。序詞を含む和歌の現代語訳に何回か挑戦しておくと、序詞かどうかを見抜く感覚を身につけることが出来る。
問4 常磐の心情は傍線部Xの1行前に「ねたくおぼえて」と説明されている。「ねたし」は「癪にさわる・いまいましい」の意。そこに注目できれば正解のAにたどり着くのは難しくない。
問5 傍線部に関する設問ではなく、設問冒頭に「この文章を通して、」と記されているということは、内容一致問題。だから消去法で考える。正解の@以外は、いずれも明らかな誤りを含む。Aは「ほんの遊び心で」が不適切。Bは「兵衛佐の熱意におされて」が誤り。Cは「垣間見して」が明らかに本文と相違。Dには「意地悪な返事をもらい、」とあるが、宮は本文中では女君から一度も返事をもらえていない。
問6 問5と同様の内容一致問題。@〜Cはいずれも誤りを含む。@は、「入内」の具体的な話があったとは書かれていないので誤り。Aは、「女房たちは〜取り次ごうとしたけれども、」が誤り。Bも、兵部卿宮が危惧した内容であって、実際に噂になったとは書かれていない。Cは「父が、…妻の形見として」が誤り。正しくは「妹が、…父の形見として」である。以上、消去法により正解はD。
(2009年1月20日初稿・6月1日改訂)※改訂箇所は前文と問3の解説

