6月6日(土) 14時 横浜能楽堂
講演:山口憲(山口能装束研究所所長)
能「班女」 シテ:山本順之
ワキ:殿田謙吉 ワキツレ:梅本昌
アイ:石田幸雄
笛:一噌仙幸、小鼓:大倉源次郎、大鼓:柿原崇志
地頭:梅若玄祥
地謡:梅若晋也・山本博通・松山隆雄・山崎正道・角当直隆・内藤幸雄・土田英貴
ドイツ、ミュンヘンのレンバッハ美術館に収蔵されていた18世紀の能装束(厚板唐織)を元に復元された鮮やかな黄色の唐織を用いた舞台。前半は装束の修復・復元作業に関する報告・解説の講演。復元された装束は2階に展示されていて、直接見ることが出来る。黄色の唐織は珍しい。石畳地扇面文様で、文様は紅入り。扇面文様は、扇を取り交わした恋人を思う能「班女」に用いると、曲風に重なり過ぎているくらいだが、今回は、色の襲ね方の目新しさがそれを補って余りあった。
小柄で、かつ謡の端正な山本順之が「班女」を演ずると、遊女の可愛さが舞台に現出するのが何よりも曲の趣に適っている。後場のサシ・下歌「げにや祈りつつ〜なほ同じ世と祈るなり」とクリ・サシ「月重山に〜独寝になりぬるぞや」をカットしての短縮上演だったので、あっと言う間に「翠帳紅閨に〜」以下のクセに突入。「欄干に立ち尽くし」で一ノ松の前にたたずむ型は上品でいい。ここは喜多流だと振り返るような型で色気があったように記憶しているが、一ノ松の前に立ってたたずむだけの型も、シンプルな分、役者の品が出ると思った。後シテは、擦箔の小袖(新しいもののようで、目映い感じがした)の上に、今回復元された黄色地の縫箔の唐織(黄と金)、そして金地の舞扇と、色のグラデーションが、通常にはない豪華な取り合わせの装束で舞われると、贅沢な時間が、それもただ静止しているのではなく、流れて行くと実感される。
シテの面は友閑作の孫次郎。江戸時代初期の作。この春に旧金剛宗家蔵(現在は三井記念美術館に収蔵)の名品「孫次郎」を見ていることもあり、表情の違いなども含めて興味深い。左右のバランスの良い顔立ちで、実際の演能には使いやすい品ではないかと感じた。梅若の若手を集めた地謡は、地頭の玄祥にぴったりついて行き、チームワークがよい。地頭だから論評すべきではないかもしれないが、玄祥は以前にも増しての肥満ぶり(館主など比較にならないほどだ)で、最近白髪になったこともあって、まるで鏡餅が裃を着けて座っているかの風情。どうか演能を第一に節制に勤めてほしい。囃子も顔ぶれが揃って、短いながらも充実した演能だった。この装束、今回限りとせずに、ぜひまた舞台で見たいものだ。
(装束は、横浜能楽堂のホームページ
http://www.yaf.or.jp/nohgaku/
でも、現在、「清経」のシテの写真で紹介されています。)
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