締め切りに追われる生活を続けているので、しばらくブログを更新していなかった。「ブログなんか書くくらいなら締め切りを守れ!」という罵声を浴びせられるのが厭だからである。だが、12月22日(火)のN響第九初日の公演には、風化しないうちに書き記しておくべき「事件」があった。
12月22日(火) 19時 NHKホール
クルト・マズア指揮 NHK交響楽団
ソプラノ:安藤赴美子 アルト:手嶋眞佐子 テノール:福井敬 バリトン:福島明也
合唱:国立音楽大学(合唱指揮:田中信昭、永井宏)
東京少年少女合唱隊(合唱指揮:長谷川久恵)
ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調 作品125
ドイツを代表するヴェテラン指揮者であり、これまでは読売日響の名誉指揮者として日本のオケでは読売日響だけを指揮して来たクルト・マズアがNHK交響楽団の指揮台に初めて登場した。これまで、様々なオケとの組み合わせ、とりわけ読売日響との組み合わせでマズアを聴いて来た筆者にとって、マズア&N響というコンビがどう成立するのか、注目の公演だった。
しかし、結果は予想外に終わった。特筆すべきは、第3楽章で、マズアが演奏を一度止めたことである。オーケストラが「止まった」のではない。指揮者が「止め」て最初から演奏し直したのだ。当然、なぜ止めたのかが問題だ。
第2楽章の後で、ホールには遅刻者が入場して来た。だが、その遅刻者の入場が終わらないうちに第3楽章の演奏が始まった。通常なら、ここは、コンサートマスターが会場に目配りをして、適切なタイミングを指揮者に知らせるべきところである。だが、そうしたコミュニケーションは、この時点で、指揮者とコンサートマスターとの間には見られなかった。
第3楽章が始まり、木管セクションの次に第1ヴァイオリンの主題提示へと進む。ヴァイオリンが2小節ほど弾いたところで、マズアは両手を拍とは無関係に横に振り、「止める」仕種を見せたが、オーケストラは演奏を続けた。数秒後、再度マズアが止めようとして、今度は木管が演奏をやめ、そして弦も音を出すのをやめた。
その後、すぐに第3楽章冒頭から演奏をやり直した。2回目は、テンポが1回目よりもかなり早かった。その後、25小節から3拍子、アンダンテになり、ヴィオラで副主題が提示された後、43小節「Tempo I」(テンポ・プリモ、最初のテンポで)で第1ヴァイオリンが主題の変奏を始めるが、ここで第1ヴァイオリンが極端に遅いテンポをとった。スコアを見ながら聴いていたわけではないので、この後の記憶がいくらか曖昧になるが、56〜58小節あたりでマズアが拍を細分して振り、テンポを幾分戻したが、その後は、2回目の演奏の冒頭のテンポに比べると引きずり気味のテンポで楽章の最後まで進行した。83小節「Tempo I」では、クラリネット(横川晴児)はどちらかと言えば棒について行こうとしたが、第4ホルンは音の変わり目で遅めに動くなど、パート間のちぐはぐが目についた。
断っておく。ここまでは私が見聞きした出来事をできるだけ客観的に書こうとしたものだが、以下は、この事態に対する私の解釈であり、推論である。だから、ここまでについては、後日放送される映像で確認しての訂正はあり得るが、事態を全て否定することは誰も出来ない。また、「場内が静まらなかったので演奏し直した」等々の説明も今後出てくるかもしれない。だから、以下の推論については、それぞれの立場や解釈からの反論が可能だが、今の時点で私が合理的と思う推論を書いておこう。
私は事態を以下のように見ると、最も筋の通ると考えている。
@ コンサートマスターの篠崎史紀(および一部の木管メンバー)は、練習で速めだったマズアのテンポとは違うテンポで第3楽章を弾こうとした。コンサートマスターは、そう心に決めていたから、第2楽章の後、独唱者たちが入場して第3楽章に入る時に、客席にはあまり気を配らなかった。
A 第3楽章でオケが指揮のテンポについて来ないと感じ、マズアは止める決断をした。
B マズアの指揮に従って、2回目は速めのテンポで途中まで進んだが、43小節「Tempo I」で第1ヴァイオリン、もっと具体的に言えば、コンサートマスターの篠崎史紀が、再びテンポを遅くしようとして、指揮と違うテンポで出た。
テンポは指揮者が決めればよい。オケが納得できなければ、次回は呼ばなければよいだけのことであって、指揮者の指示と違うテンポで弾く必要はない。もし「N響らしくない第九」になったとしたら、責任は指揮者と、その指揮者を起用した事務局が負えばよい。結論から言えば、今回の事態の責任の大半はコンサートマスターの篠崎史紀にある。客席には「N響の第九」が聴きたかった者もいれば、「マズアの第九」が聴きたかった者もいるだろう。私は後者の立場から、篠崎に猛省を促したい。指揮者と協力して演奏会を作り上げる上でのオーケストラ側のリーダーとしてのコンサートマスターの役割を履き違えているようにしか見えない。@は、演奏中のことではないので完全に推論であるが、Bは、通常の演奏ではあり得ないテンポの変化だったので、私の眼と耳には異常に思われた。
本日(12月22日)は、FMラジオの生放送のほか、テレビ収録が行われた。ハイ・ヴィジョンでは12月26日(土)に、BS2と教育テレビでは大晦日に放送の予定だ。
この放送については、以下の2点が注目される。
1.NHKが23日以降の公演で再収録を行うかどうか
2.NHKが22日の映像を放送する場合に、どう編集されるか。
本日も、2日目の演奏を15時から聴く予定だ。演奏の全体的な批評は、それを聴いた後で書きたい。
【付記】
この件についての資料となる当日の録音を提供してくださった方、メールでコメントをお寄せくださった皆さまに、心より御礼申し上げます。


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youtubeにアップしてください!でOKでは?
youtubeは音声だけの演奏も、クラッシック音楽の場合かなりあり。
2005年8月6日、南フランスの世界遺産「オランジュ古代劇場」でのクルト・マズア指揮、「第九」、三楽章
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クルト・マズア指揮
フランス国立管弦楽団
[Orchestre National de France]
合唱:
フランス国営放送合唱団&児童合唱団
ソプラノ:メラニー・ディーナー
アルト:マリー=ニコル・ルミュー
テノール:ヨルマ・シルヴァスティ
バス:フランツ=ヨーゼフ・ゼーリヒ
マズーアがどういう第九を振ろうとしているのか、
聴きに行きたくなってしまいます。
Tempo Iの部分は、2ndとVcのテンポを受け、ゆっくりになったと思われます。
しかし、圧倒的かというと疑問符が付きます。あのころの東側のテンシュテットとかプロムシュテットとかケーゲルの第9は圧倒的なんで。第9はやらない人ですがムラヴィンスキーもです。中でマズアのスタジオ盤は、まあ普通としか。
ライブはそんなにすごいんですか?