2016年03月28日

2016年春 ドイツの旅 (4)

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大収穫だったドイツ国民劇場の『薔薇の騎士』再見

〈写真解説〉
上:チケット。一番下に「時間、それは奇妙なもの」という第1幕後半の元帥夫人の歌詞が印字されているのがさりげなくお洒落。下:配役表。Sayaka Shigeshimaが読み取れるようにトリミングしました。

 17時45分頃にドイツ国民劇場に到着。『薔薇の騎士』を当日券で観る。去年はもっとギリギリに到着したけれど、奥さんが来られなくなってチケットを持てあましているという人が前から3列目(1回券の定価は65ユーロ)を30ユーロで買ってほしいというのに乗って、すごく良い席で観ましたが、今年は売りに来ている人は見当たらなかったので、普通にチケットを購入。手頃な価格の3階席へ。下から2番目のランクの28.7ユーロの席、3階5列目のほぼ真ん中にしました。新国立劇場の4階席と違って、ちゃんと舞台は隅々まで見えます。
 去年も買ったけれど今年もプログラム(2ユーロ)を買い、席に着いて去年と同じ演出だし、指揮者も配役も大差ないだろうと思いながら配役表を見てびっくり。なんとオクタヴィアンを歌っているのがSayaka Shigeshimaさんという日本人ではありませんか!『薔薇の騎士』という作品を御存知の方には釈迦に説法ですが、オクタヴィアンはこの作品の主役で婚約の印の「銀の薔薇」をファーニナル家に届けて、結局はファーニナル家の令嬢ゾフィーと結ばれることになる主役です。元帥夫人は第1幕と第3幕だけ、ゾフィーは第2幕から登場しますが、オクタヴィアンは最初から最後まで出ずっぱりの大役です。もう1つ言えば、メゾ・ソプラノというのは、日本人で世界的に通用する人があまり出て来ていない、ドイツと日本でオペラを観ていると落差を感じる声域なので、それを日本人が歌っているなんてすごい!いったいどんな人なのだろうと思いました。時差と闘うヨーロッパ初日の夜ですが、これだけで眠気が吹き飛びました。
 ヴァイマールの『薔薇の騎士』の舞台は、ヴェラ・ミネロヴァという女性の演出家によるもので、第1幕の幕開きが元帥夫人とオクタヴィアンの情事を覗き見する執事の姿から始まる等「覗き」の場面を多用して、この作品のコミカルな側面を強調した演出です。もともと貴族の世界に「覗き見」は付き物です。主人の情事を知っていても口外しないのが家来の役どころ。これはオペラでも日本の古典の『源氏物語』でも変わりません。『薔薇の騎士』の場合、脇役のヴァルザッキやアンニーナも覗き見をして事情通だからこそ暗躍するわけですよね。
 元帥夫人のラリッサ・クロキーナは、この日は第1幕後半の独白の部分で声がしっかりと身体に響いていない感じが今一つでしたが、第3幕はなかなか良い声でした。ゾフィー役のエリザベート・ヴィンマーは第2幕の登場直後が少し不安定でしたが、尻上がりに調子が上がって行きました。対するオクタヴィアンの重島清香さんは、日本人らしい生真面目さで第1幕から第3幕までしっかりと歌っていて安定していました。ズボン役の男の演技や歌い回しの味というのはまだまだこれからだと思いますが、アンサンブルの足を引っ張る瞬間が皆無なのは素晴らしいと思いました。
 稿を改めて書きますが、日本人の音楽家の方の活躍を知って書こうとすると困るのが、お名前の表記です。現地のプログラムにはローマ字表記しかありませんから「しげしま」さんも「さやか」さんもどんな字なのかわかりません。重島さん、ローマ字表記でも同姓の方は少ないと思いますが、「清香」の字でさやかさんは珍しいですよね。終演後に御本人にお会いして確認しないと書けません。最初は終演後に楽屋口でお待ちしようかと思ったのですが、ふと思いついて、3幕の開幕前にピットの上から日本人のオーケストラ団員の方にお声をかけて、終演後にコンタクトをお願いしました。そんなこともあり、第3幕だけは空席の目立っていた1階2列目で図々しく聴かせてもらいました。
 この日の第3幕最後の3重唱は実に心地よい出来栄えで素晴らしい時間でした。オクタヴィアンが「Marie Therese」と歌い始める直前の休符がこの日は特別に長く、その瞬間に歌手もオーケストラも気持ちが1つになったように思います。GMD(音楽総監督)のシュテファン・ゾリョン(Stefan Solyom)、劇場の指揮者として良い仕事をしたと思います。こういう雰囲気で歌手の調子が良いと、ドイツの劇場のオーケストラっていうのは上手いんです。オケのメンバーも全員自分の持っている一番良い音が自然と出て来て、瞬間的にはベルリン・フィルにも負けないくらい上手い。私は、重島さんへの感情移入もあって、元帥夫人が「In Gottes Namen !」と三重唱を歌いきってティンパニーのロールが入る瞬間に思わず落涙してしまいました。後で聞けば、今日はこのプロダクションの最終日(今のところ来シーズン以降の再演の予定はない)だったのだそうで、舞台に上がっていた人たちの特別な思いが結集した瞬間に立ち会えたのは本当に幸せでした。
posted by 英楽館主 at 12:15| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | オペラ雑談集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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